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★伊東和則写真館★静馬のこと [まつさをな]

成井豊が最も気持ちを入れて書いた、と言っていたのが静馬。

 
子供の時から親友に囲まれて楽しい思い出ばかりを作りながら育ってきた僕とは対照的に、成井は「親友」だと向こうが思っていた相手を憎んでいた、という過去を持っています。
作家って、そういう人じゃないとできないのかもしれません。
そもそも僕が初めて観た成井の芝居『キャラメルばらーど』も、見た目はかわいい話でしたが、強烈に孤独な主人公が「たった一歩」だけを踏み出す物語でした。
 
成井豊の芝居の、最も難しいところがこの「たった一歩」なのです。
基本的にキャラメルボックスは、エンターテインメント・ファンタジーを目指しています。宮崎駿監督の作品も、「たった一歩」の成長がテーマであることもあったりしますが、しかし『まつさをな』の静馬の「たった一歩」は、あまりにも、あまりにも、悲しすぎます。

 
5年前の今頃、静馬を演じる大内厚雄は大きな大きな人生の転機に引きずり込まれました。
あれからの大内の変化は、大内を知る人、大内を見続けてきた人には、もしかすると眩しくもあり、神々しくもあったのではないでしょうか。
 
屈折と、挫折と、絶望と、孤独を知る、もう一人の主人公。
あなたは、千鶴、啓一郎、静馬、またはそれ以外の登場人物達の誰に自分を見ましたか?


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コメント 5

優

今回、静馬の述懐に、ボロボロ泣かされました。
静馬に、枇杷の実の甘味は感じられたのでしょうか?
感じられたならいいな……と、想いながら、ラストシーンを観ていました。
啓一郎タイプの私は、静馬の言葉を聞いて、また、背筋を伸ばすのです。
by 優 (2007-05-01 21:20) 

え

『たった一歩』…石川県の一部では『たった』は[すっごくх5]くらいの意味でも使われています。『たったおもしかった』は『すっごくх5楽しかった』という意味に‥ 同じ言葉なのに意味が違う、日本語は難しいです。 …両方使ってます
by え (2007-05-02 09:57) 

みずほ

今回のお芝居を観たとき、千鶴でもなく啓一郎でもなく静馬に惹かれました
静馬の立場に立つとあまりに辛いストーリー
台詞には出てこない出来事や心の葛藤があったのだろうし、静馬の目線からみた「まつさをな」も観てみたい気がします
観劇後、全く違う気持ちになりそうです
by みずほ (2007-05-03 19:31) 

ゆみちゃん

遅くなりましたが東京公演を3回ほどみさせていただきましたが毎回静馬の立場でみていました。本当は圭一郎・千鶴の立場でもみたかったのですが。丁度キャラメルを見始めたのがミスターからだったので大内さん的にはアンフォ~からずっと観てきてなにか考え深いものを感じました。
はやくDVDで改めて観たいと思います。
by ゆみちゃん (2007-05-12 21:52) 

時雨

許せない、と思ったけれど、ふっと静馬との気持ちにシンクロした(ような気がした)瞬間がありました。
自分ではどうにもならない事で軽んじられる、その痛みは、他人が考えるよりも深く、苦しいものだと、私は私なりに感じていました。
私にもそういう経験があったから。

もしかしたら、私は「まつさをな」の登場人物では、静馬に近いのかもしれないな、と思います。
by 時雨 (2007-05-17 23:16) 

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