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『猫と針』〜岡田達也 [猫と針]

『猫と針』の舞台写真を撮るのは、本当に難しかったです。
なんたって、普段のキャラメルボックス公演と違って、「特に何も起きない」からです。
いえ、いろんなことが起きるんです。
ただ、それは、会話の中で起きる、さざ波のような事件。

そして、「人はその場にいない人の話をする」というキャッチコピーからもわかるとおり、いない人がいっぱい出てきて、その人達は、写真に撮りようがないわけです。
昔、僕が物凄く好きだった「転位21」という劇団の芝居は、小劇場で、ピリピリするほどの緊張感の中で芝居が進み、呼吸もしてはいけないのではないか、というくらいに観ている方が追い詰められていったものですが、『猫と針』は、ものすごい緊張感はあるものの、しかし、「見せ場」とか、「衝撃的な一瞬」とかが、あえて全く無いのです。

かと言って、のんびり見ていられるかと言ったらそんなことはなくて。
ちょっとした仕草、ちょっとした動きの一つ一つが、演出家・横内謙介の、というよりも、全てが作家・恩田陸が仕掛けた観客に向けた罠であるかのようにさえ感じられ、舞台上の人物全ての一挙手一投足から目を離せなくなり、極度の集中力を要求されているうちに笑わされていたり、騙されていたり、していくのです。

そして、通常のキャラメルボックスの公演ではありえない演技も目立ちます。
ぶらぶらする、とか。
だらだらする、とか。
タバコを吸う、とか。
聞こえないような声で喋る、とか。

小さな声で喋られてしまうと、観ている方は、逆に必死で聴こうとするしかないわけで、視覚と聴覚だけでない、様々な感覚がどんどん研ぎ澄まされていくのがわかります。
 
俳優座劇場では、なんと、劇場の外を走る車の音や、劇場の隣のバーで外国人が飲んで騒いでいる音まで聞こえてしまうほどの静寂が襲いました。
とりわけ、台風の夜の『猫と針』は、天然の効果音のおかげで、全ステージの中で最も盛り上がったということです。
 
もう、あとは福岡5ステージを残すのみ。
是非、ナマでこその緊張感を、西鉄ホールでお楽しみください。


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まなママ

土曜日観に行ったばかりなので、写真を観られてうれしいです。
一方、またもや思い出して、もやもや・・・。
ついていくのに必死で、脳みそフル回転でした。
終演後は、友達と糖分補給に行きました。
by まなママ (2007-09-11 02:04) 

さくら

見に行けないのでこういう写真のアップは大変うれしいです
とっても残念だけどDVDがでるまでがまんしますね

で・・・岡田さんの髪型がきになってしかたありません。
by さくら (2007-09-11 17:47) 

TIKIPI

この芝居の最中に、一人突っ込み、ガサガサ、ごそごその女性に
後に座られた悲劇をどうしましょう…。
DVDでゆっくり静かにもう一度味わいたいと思います。
by TIKIPI (2007-09-11 21:39) 

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